2021年11月28日

 新型コロナウイルス収束のカギは? その2


 11月25日の厚労省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて内閣官房の「COVID-19 AIシュミレーションプロジェクト」が実施している各種データが提出されました。その中で第5波の収束の予想を的中させたことで注目を集めている名古屋工業大学の平田晃正氏らの今後の感染予測では、東京都の第6波の1日当たりの新規陽性患者数は最大で800人強、重症者も50人程度との試算が出されました。また京都大学大学院教授の西浦博氏らの分析では、北海道の実効再生産数は推定日11月24日(最新推定感染日11月9日)で1.69。増減を繰り返しながらも実効再生産数の95%信頼区間での下限が1を超え、12月以降の新規感染者数は増加と予想しています。
 これとは別に札幌市での第6波の予測では感染のピークが12月19日頃で1日約190人程度と推計されている様です。これは5月21日に経験したピーク時727人の3分の1以下です。また前述の平田教授らによると「年末年始にかけて全国的に感染者が増加するものの1月中旬がピークで、ワクチン接種等の適切な感染対策を続ければ第5波の5分の1から10分の1に新規感染者が抑えられる」という事だそうです。

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 と言う様な報道を眼にしてほっとしていたのもつかの間、つい数日前に南アフリカ国立伝染病研究所の発表した新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の脅威に世界中の国々が警戒を強めています。このウイルスにはスパイクタンパクだけでも30か所以上の変異が見つかり感染性が強く既存のワクチンによる免疫をすり抜ける可能性があるとの事らしいです。つい最近までは、メルクの「モルヌピラビル」やファイザーの「パクスロビド」など外来で使用可能な経口薬の抗ウイルス薬やまた皮下注射が出来るようになった抗体カクテル薬の「ロナプリーブ」などの使用できる武器が増えることでこれらがゲームチェンジャーとなりインフルエンザ相当の扱いとなる事を期待していましたが、手強い敵に対し警戒を緩めるのはまだまだ先の事の様です。既にファイザーやモデルナはワクチンの改良を表明していますがイタチごっこが延々と続かない様に願っています。


posted by 凄腕院長 at 18:56| 日記

2021年11月14日

 新型コロナウイルス収束のカギは? その1


 国立遺伝学研究所と新潟大のチームは10月に開かれた学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を発表しました。

 新型コロナウイルスには他のRNAウイルスには無いnsp14と呼ばれる切断酵素が備わっていてゲノムに変異が生じると修復する働きをします。この酵素の働きが落ちることで変異が積み重なるとやがてウイルスは増殖できなくなり自壊します。チームは国立感染症研究所の公開する新型コロナのゲノムデータを解析したところ、第5波では遺伝子の変化が起きたウイルスの割合は感染拡大とともに増えてピーク前から収束までの間は感染者のほぼ全てを占めていたとの事です。nsp14の遺伝子が変化したウイルスにはゲノムの変異が通常の10〜20倍あり、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC」という酵素がnsp14を変化させたと推測しています。東アジアやオセアニアにはこの酵素の働きが特に活発な人が多いという事です。

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 しかしこれは現時点では仮説に過ぎず異を唱える研究者もおり、その理由として挙げられる矛盾は1)ウイルスの増殖がある時点で制限されるならば増殖・感染効率の高い元のデルタ株の流行を置き換えられない、2)仮に「弱くなった」ウイルスが旺盛に増えるならば、そのウイルス自体は流行性を保っているので流行は収束しない、などです。結局のところ最も説得力があるのは、第5波での大流行による自粛とワクチン接種が急速に広まったタイミングがちょうどうまい具合に重なり流行を収束に向かわせたというものではないでしょうか。


posted by 凄腕院長 at 21:24| 日記