2016年07月08日

  夏に注意するべき病気 −その1 のど編―  



1.溶連菌感染症 ; 一般的にA群β溶血性連鎖球菌という細菌による咽頭炎のことです。感染症法では5類の感染症に含まれ小児科定点把握疾患に分類されており発生届けを義務付けられています。例年冬季と春先から初夏にかけて報告数が多くなっていますが、特に昨年の後半からは全国的に報告数が増えています。主症状は発熱、咽頭痛、全身倦怠感でしばしば嘔吐、苺舌、頚部リンパ節炎を伴います。時に猩紅熱(点状紅班様皮疹が出現)、リウマチ熱糸球体腎炎などの重篤な合併症を引き起こす場合があります。主に学童初期に多く見られ7歳以下で全報告の70%を超えますが3歳未満では稀です。成人でも当たり前に扁桃炎を起こすことがあり細菌性扁桃炎の2〜3割が溶連菌によると言われます。典型例は咽頭所見を見ただけで診断は容易ですが、迅速診断キットにより溶連菌抗原を検出(通常綿棒(スワブ)で咽頭搾過物を採取)すると確実です。私は場合により確実に検体を採取するために鼻の奥から採取することもあります。治療は小児のガイドラインによるとペニシリン系抗菌薬(ワイドシリンレジスタードマーク、サワシリンレジスタードマークなど)を10日間またはセフェム系抗菌薬(フロモックスレジスタードマーク、メイアクトレジスタードマークなど)を5日間投与となっています。本疾患は学校において予防すべき伝染病として明確に規定されていませんが、通常適切に抗菌薬を内服すれば24時間以内には感染力が無くなると考えられます。

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     溶連菌感染症の咽頭所見(自験例)


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     ヘルパンギーナの咽頭所見
     ENT臨床フロンティア(中山書店)より引用


2.咽頭結膜熱(プール熱) ; 数種の血清型のアデノウイルスによる発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症です。その他胃腸炎などの消化器疾患、出血性膀胱炎、肝炎、膵炎から脳炎にいたるまで多彩な症状を引き起こすこともあります。1年を通じて見られますが6月頃から徐々に増加し始め7〜8月にピークを形成する代表的な「夏風邪」のひとつです。稀に成人でも感染することがありますが、細菌感染との見極めがなかなか難しく予備知識が無いと(周囲に乳幼児の感染者が居た)診断が困難な耳鼻科医泣かせの疾患です。プールの水を介した感染も多く5歳以下で報告数の7〜8割を占めています。診断はイムノクロマト法による迅速診断検査が主に行われ大変有用ですが、残念ながら有効な治療薬は無く4〜5日発熱が続きます。対症療法が中心となり熱いもの酸味のあるものは避けて口当たりの良いものを摂取するようにします。学校保険法では第二種伝染病に位置づけられており主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止となっています。

3.ヘルパンギーナ・手足口病 ; 両疾患ともに、エンテロウイルス(EV)属の感染(手足口病は主にA群コクサッキーウイルス(CA)16、10、EV71など、ヘルパンギーナは主にCA4、CA10、CA6など)によって引き起こされる発疹性の疾患です。例年ゴールデンウイーク明けころから患者報告数が急増し夏季休暇前の7月中〜下旬前後が流行のピークとなります。これらは迅速診断キットが無いので臨床症状で診断します。
1)へルパンギーナ ; 患者の年齢は4歳以下がほとんどで1歳代に最も多く見られます。2〜4日の潜伏期の後突然の初熱に続いて咽頭粘膜の発赤が著明となり軟口蓋から口蓋弓にかけて数mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現します。発熱は2〜4日程度で解熱しやや遅れて粘膜疹も消失しますが口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、脱水症などを来たすことがありますが、ほとんどは予後良好です。治療は対症療法のみです。学校において予防すべき伝染病の中には明確に規定されてはいませんが、回復後も長期にわたってウイルスが便から排出されるので注意が必要です。
2)手足口病 ; 4歳位までの幼児を中心とした疾患で2歳以下が半数を占めますが学童でも流行が見られることもあり、また稀に両親など成人へと伝播して発症することがあります。3〜5日の潜伏期をおいて口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水泡性発疹が出現します。時に肘、膝、臀部などにも出現します。発熱は1/3程度に見られ経度で38℃以下のことがほとんどです。稀に髄膜炎、小脳失調、脳炎などの中枢神経系の合併症や心筋炎、AFP(急性弛緩性麻痺)などを生じることもあります。治療は特別なことを要さないことがほとんどで、学校での予防すべき伝染病にも含まれておらず、登校登園は患者本人の状態によって判断すれば良いと考えられます。

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     手足口病の手掌と口腔の発疹


posted by 凄腕院長 at 19:45| 日記