2017年10月12日
ムンプス難聴のこと
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスによる感染症で飛沫や接触で感染します。耳下腺の腫れや痛み、発熱が主症状で発症前から感染源になるため患者を隔離しても広がりは止められません。従来より合併症としての難聴発症はそれ程稀ではないと言われていましたが、今回日本耳鼻咽喉科学会による初の全国調査でより実態が明らかとなりました。
少し前に「北海道新聞」でも報道されていましたが、日本耳鼻咽喉科学会はおたふくかぜが流行した2015年1月から2016年12月までの2年間を調査期間として、全国の耳鼻咽喉科医療機関5565施設を対象に調査票を配布し、3536施設から回答を得ました。その結果336人がムンプス難聴と診断されていました。さらに336人のムンプス難聴患者について追跡調査を行い、めまい、唾液腺腫脹、頭痛、耳鳴などの合併症の有無、難聴に対する治療の内容、最終的な聴力、さらに補聴器や人工内耳などの必要性について明らかにしました。その結果314人について回答が得られ、一側難聴者が300人、両側難聴者が14人で、83%の261人に高度以上の難聴(日常生活に支障を来たすレベル)を認めました。さらに今回の調査では年齢ごとのムンプス難聴発症者数も明らかとなりました。未成年、特に5〜12歳の学童期における発症が圧倒的に多く、次いで子育て世代である30歳代に多いことも分かりました。
おたふくかぜに特効薬はありませんが予防ワクチンはありますからワクチン一本接種しておけばこの合併症を防ぐことが可能です。1989〜93年の間は、はしか、風疹との混合ワクチン(MMRワクチン)として原則無料の定期接種でしたが、発熱、頭痛、嘔吐などが主症状の無菌性髄膜炎の副作用が問題になり中止された経緯があります。以降はおたふくかぜワクチン単独の任意接種となったことで接種率は30〜40%に低迷し、他の先進国ではほぼ無くなった流行がわが国では繰り返し起きています。現行のワクチンはウイルスを弱毒化した生ワクチンですが自然感染に比較するとはるかに安全性の高いものです。おたふくかぜに未感染の方は是非このことを踏まえてワクチン接種をご一考下さい。
posted by 凄腕院長 at 21:52| 日記