各メディアで報道の通り、風疹患者が7月下旬頃から増え続けています。特に関東圏を中心に届出数が増加していますが、現在の流行状況は感染者数が14,000人を超えた2012〜2013年の大規模流行前の状況に酷似しており更なる感染拡大が懸念されています。そんな中札幌市においても第41週、42週(10/8〜21)と立て続けに1件ずつの報告が出ており、今年度は合計5件、北海道全体で9件が報告されました。全国では現在まで累計約1,300件報告されており、患者の多くは予防接種歴がないもしくは不明の30〜40代の男性が中心で男性患者は女性患者の5倍多く、女性では20〜30代に多くなっています。
風疹は麻疹の様に空気感染はせず、咳やくしゃみのしぶきで感染する飛沫感染と、接触感染(ウイルスを含んだ体液に触れた手で粘膜に触れること)で感染します。風疹の症状は発熱・発疹・リンパ節腫脹が特徴で、多くが軽症で経過しますがまれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症を起すことがあり、また大人がかかると、発熱や発疹の期間が子供に比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。症状がはっきりしないまま治る「不顕性感染」も15〜30%あります。特に注意すべきは妊婦への感染です。妊娠20週頃までの初期に風疹ウイルスに感染するとおなかの赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症する可能性があり、白内障、先天性心疾患、重度の難聴などそして精神や身体の発達の遅れなどの症状を起こします。前回2012〜2013年の流行の影響で45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されています。
実は風疹自体はワクチンで防げる病気であり、日本では2006年4月から麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)が2回接種(1歳時と小学校入学前1年間の2回)として定期予防接種になっています。しかし、それ以前は接種がされていなかったりされていても1回だったり、女性だけの接種でした。(下図参照https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella.html)実際に30〜50代の成人男性は風疹の免疫を持っていないことが多く、今回の首都圏の風疹患者の多くは予防接種歴がない、もしくは予防接種歴不明の30〜40代の男性が中心になっています。
さてここからが本題ですが、2014年3月に出された厚生労働省の風疹に関する特定感染症予防指針では「早期に先天性風疹症候群の発生をなくすとともに、平成32(2020)年度までに風疹の排除を達成すること」を目標としています。そのためには妊婦さんへの感染を防止することが重要であり、感染拡大を防止するためには30〜50代の男性に蓄積した感受性者を減少させる必要があります。社会全体で風疹を撲滅していくためにもまずは血液検査で抗体検査を行い、充分な抗体が無い場合にはMRワクチンの2回接種が勧められます。ただし当の妊婦さんは風疹含有ワクチンの接種は受けられません。また接種後は2ヶ月間に妊娠を避ける必要があることをお忘れなく。特に優先して接種すべき人としては定期接種対象者(1歳児と小学校入学前1年間の幼児)と妊娠を予定している女性以外だと、妊婦周囲の人、特に妊婦さんの家族の方です。