国立感染症研究所の24日の発表では全国地方衛生研究所と共同で実施している抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスによると、1月21日時点でA型インフルエンザウイルス(H3N2型)に感染した21人に対してゾフルーザを使ったところ2人(9.5%)からゾフルーザの耐性株(I38T耐性変異)が見つかりました。A/H1N1pdm2009亜型やB型からは検出されていません。感受性試験も行っていますが、検出されたゾフルーザ耐性ウイルスの2株は野生株に比べて、それぞれIC50値(培養系でウイルス増殖を50%抑制する抗インフルエンザ薬の量)が76倍、120倍高いという結果でした。ただし、この2株はタミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬には感受性がありました。
ゾフルーザ(パロキサビル)は従来のタミフル、リレンザ、イナビルなどノイラミニダーゼ阻害薬がウイルスの遺伝子が細胞外に出るための酵素を疎外するのに対し、ウイルスのRNA合成を阻害して増殖を妨げるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬です。1回の服用で治療が完結する利便性とウイルスの抑制効果が高いという評価からマスコミで大きく取り上げられ市場でもニーズが大きいため、最近出荷調整がされたと言うことも耳にします。しかし既に治験段階から薬剤耐性ウイルスの問題を指摘され、未知の副作用が起こる可能性もあることなどから日本感染症学会も日本小児科学会も本薬剤の位置付けは不明確として積極的な推奨を見送っています。また一部の有名病院でも採用を見送っている様です。
過去に発売後、副作用で消えた抗菌薬がいくつもあることは事実であり、また安易な処方が薬剤耐性の原因の一つとなることを肝に銘じなくてはなりません。