2020年09月10日

難治性の好酸球性副鼻腔炎の方に朗報 −生物学的製剤(デュピルマブ)が使える様に−


 コロナ渦により特に小児科や耳鼻科が大打撃を受けるさ中の今年3月から、ひっそりと耳鼻咽喉科疾患である「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に対する新たな治療として抗IL-4/13抗体であるデュピルマブ(商品名 デュピクセントレジスタードマーク)の皮下注射が認可されました。これは従来難治性のアトピー性皮膚炎と気管支喘息に対する治療薬で適応症が追加されたことになります。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎には2型炎症とよばれる炎症反応が関与しており、デュピルマブは2型サイトカインであるIL-4及びIL-13の両シグナル伝達を阻害することで2型炎症の上流から下流までを広範囲に抑制します。

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 現在では鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の多数は「好酸球性副鼻腔炎」であり中等・重症の好酸球性副鼻腔炎は厚労省の指定難病に認定されており約2万人居ると言われています。従来から鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対しては内視鏡下副鼻腔手術が行われており、鼻茸を基部から取り除き副鼻腔を鼻の中から徹底的に清掃する手術が多くの病院で行われて成果をあげています。しかしその中の一部で特に喘息を合併している方は鼻茸が再発しやすく何度も手術を受けることになったり、ステロイドを内服しないとまたすぐに再発を繰り返します。鼻茸による鼻つまりは集中力の低下を来し、また嗅覚・味覚障害により食べる楽しみが奪われ、ガスや煙の臭いに気づかず生命の危機にさらされることもあり得ることなどでQOLが低下することがあります。

 治療としては2週間おきに1本を皮下注射し、症状が安定したら4週毎の投与に変更することもあります。問題点は費用が3割負担の方で月約4万円(月に2本注射として)とやや高額なことですが、ステロイド内服に頼らざるをえない患者さんにとっては朗報と思います。当院でも気管支喘息に対し治療を行っている方で鼻の症状がかなり改善傾向である方が数名おられますが、今後注意深く観て行こうと思っています。

 デュピクセント剤型.JPG


posted by 凄腕院長 at 20:21| 日記