2021年01月03日

 英米で始まったCOVID-19ワクチン接種と新規変異株の話


 この年末には大晦日に東京都での新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多を更新して一挙に1300人余りに達するインパクトを受けまた感染拡大が進む中、欧米では新たに開発されたCOVD-19ワクチンの接種が2020年12月初旬から始まりました。わが国でも承認申請が行われ今年四半期内には接種開始が期待されています。
 わが国はファイザー、モデルナ、アストラゼネカ各社とワクチン供給(合計2億9000万回分)についての契約または基本合意を締結しており、昨年12月18日にはファイザーから承認申請が行われました。この内ファイザー、モデルナのワクチンはmRNAワクチンで、ウイルスが生体内に侵入する際にヒト細胞上のACE2と結合するウイルス粒子表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子全体を用いて作られています。mRNAは人体や環境中のRNA分解酵素で簡単に破壊されるため脂質でできたナノ粒子で包んでカプセル化して筋肉内に投与されます。mRNAワクチンの臨床試験自体は既にHIV感染症や各種のがんワクチンでも行われてきましたが、ヒトに実用化されるのは今回初めてのため安全性等を懸念する声が多くあります。有効性については両者ともに第V相臨床治験の中間報告では有効率90%以上と優れた成績です。対してアストラゼネカはウイルスベクターワクチンでチンパンジーアデノウイルスを用いたもので人体内では複製されずに増殖できません。やはりスパイクタンパク質の遺伝子を組み込んであります。
 1月2日のNHKの報道によると政府は早ければ2月下旬にも接種開始できる様体制整備を急ぐ方針とのこと。その際には既に医療関係者、高齢者、基礎疾患のある人の優先が決まっているわけですが、日経メディカルによる医療従事者に対するアンケート調査では「早期に接種したくない」との回答が3割近くに上っています。幸いわが国で接種が始まる頃までには欧米で数千万人規模の前例がありますので今後も注意深く観ていかねばなりません。

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 昨年暮れの厚労省の発表では英国で確認されているSARS-CoV-2新規変異株(VOC-202012/01)が検出された帰国者が12月28日までに計14例となりました。英国での解析で特徴としては従来の流行株よりも感染性が高く、再生産数を0.4以上増加させ、伝播のしやすさを最大70%程度増加すると想定されていますが、現時点で重症化を示唆するデータは示されていません。これ以外にも南アフリカでは別系統の新規変異株(501Y‐V2)の報告もありますがわが国では確認されていません。年末年始の首都圏での感染拡大傾向との関連性や北海道での感染の再拡大が大いに心配されるところです。



posted by 凄腕院長 at 21:29| 日記