2021年11月14日

 新型コロナウイルス収束のカギは? その1


 国立遺伝学研究所と新潟大のチームは10月に開かれた学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を発表しました。

 新型コロナウイルスには他のRNAウイルスには無いnsp14と呼ばれる切断酵素が備わっていてゲノムに変異が生じると修復する働きをします。この酵素の働きが落ちることで変異が積み重なるとやがてウイルスは増殖できなくなり自壊します。チームは国立感染症研究所の公開する新型コロナのゲノムデータを解析したところ、第5波では遺伝子の変化が起きたウイルスの割合は感染拡大とともに増えてピーク前から収束までの間は感染者のほぼ全てを占めていたとの事です。nsp14の遺伝子が変化したウイルスにはゲノムの変異が通常の10〜20倍あり、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC」という酵素がnsp14を変化させたと推測しています。東アジアやオセアニアにはこの酵素の働きが特に活発な人が多いという事です。

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 しかしこれは現時点では仮説に過ぎず異を唱える研究者もおり、その理由として挙げられる矛盾は1)ウイルスの増殖がある時点で制限されるならば増殖・感染効率の高い元のデルタ株の流行を置き換えられない、2)仮に「弱くなった」ウイルスが旺盛に増えるならば、そのウイルス自体は流行性を保っているので流行は収束しない、などです。結局のところ最も説得力があるのは、第5波での大流行による自粛とワクチン接種が急速に広まったタイミングがちょうどうまい具合に重なり流行を収束に向かわせたというものではないでしょうか。


posted by 凄腕院長 at 21:24| 日記