2021年02月14日

 関東地方でスギ花粉が飛び始めました。−北海道でもそろそろ花粉症の季節到来です!−


 関東地方では先週あたりからスギ花粉が飛び始めました。今シーズンの場合花粉症の症状(鼻水、くしゃみ、嗅覚減退など)と新型コロナウイルス感染症の区別がつけずらい事を危惧する声も挙がっている様です。ここ北海道、札幌ではまず雪解け時期からシラカバと同じカバノキ科のハンノキ花粉が飛び始めますが、昨日今日の最高気温を見ていると今年の花粉飛散開始は早まるかもしれません。例年だと3月に入ってからですが、近年では2月中からいきなり多く飛散する年もあります。昨年がその良い例でハンノキもシラカバ花粉も飛散量が多かったのですが、ちょうど北海道に緊急事態宣言が発令されており、外出自粛、マスク・手洗いなどが重なって余り症状が重症化せずに済んだ方が多かった印象です。

  2020ハンノキ花粉.JPG
  2020シラカバ花粉.JPG
  昨年の道立衛生研究所のデータ

 さて今年の花粉飛散予測については例年通り「日本気象協会」「ウェザーニュース社」「北海道立衛生研究所」などが既に発表済みではあります。概ね例年より少なめといったところでしょうか。花粉の飛散量は前年夏季の気温、日照時間、全天日射量が関与すると言われていますが、昨年夏の気温や天候はまあまあ平均的かという記憶があります。その一方で昨年のシラカバ花粉飛散量は非常に多かったので今年は少ないのではという予想が成り立ち、これは飛散量の多い年と少ない年が交互に現れる大まかな傾向があるからです。

  花粉飛散量 日本KK.JPG
  シラカバ花粉飛散量予測 WN.JPG
  日本気象協会とウェザーニュース社の予測

 最も信頼性の高い北海道立衛生研究所が昨年11月に発表した予測によると今シーズンの札幌でのシラカバ花粉飛散量は「やや少ない」とのことですが、今月中にもハンノキ花粉の飛散が始まる可能性があり毎年花粉症でお悩みの方は早めの対策(初期療法)をお勧めします。


posted by 凄腕院長 at 15:27| 日記

2021年01月03日

 英米で始まったCOVID-19ワクチン接種と新規変異株の話


 この年末には大晦日に東京都での新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多を更新して一挙に1300人余りに達するインパクトを受けまた感染拡大が進む中、欧米では新たに開発されたCOVD-19ワクチンの接種が2020年12月初旬から始まりました。わが国でも承認申請が行われ今年四半期内には接種開始が期待されています。
 わが国はファイザー、モデルナ、アストラゼネカ各社とワクチン供給(合計2億9000万回分)についての契約または基本合意を締結しており、昨年12月18日にはファイザーから承認申請が行われました。この内ファイザー、モデルナのワクチンはmRNAワクチンで、ウイルスが生体内に侵入する際にヒト細胞上のACE2と結合するウイルス粒子表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子全体を用いて作られています。mRNAは人体や環境中のRNA分解酵素で簡単に破壊されるため脂質でできたナノ粒子で包んでカプセル化して筋肉内に投与されます。mRNAワクチンの臨床試験自体は既にHIV感染症や各種のがんワクチンでも行われてきましたが、ヒトに実用化されるのは今回初めてのため安全性等を懸念する声が多くあります。有効性については両者ともに第V相臨床治験の中間報告では有効率90%以上と優れた成績です。対してアストラゼネカはウイルスベクターワクチンでチンパンジーアデノウイルスを用いたもので人体内では複製されずに増殖できません。やはりスパイクタンパク質の遺伝子を組み込んであります。
 1月2日のNHKの報道によると政府は早ければ2月下旬にも接種開始できる様体制整備を急ぐ方針とのこと。その際には既に医療関係者、高齢者、基礎疾患のある人の優先が決まっているわけですが、日経メディカルによる医療従事者に対するアンケート調査では「早期に接種したくない」との回答が3割近くに上っています。幸いわが国で接種が始まる頃までには欧米で数千万人規模の前例がありますので今後も注意深く観ていかねばなりません。

  新コロワクチン2.JPG

 昨年暮れの厚労省の発表では英国で確認されているSARS-CoV-2新規変異株(VOC-202012/01)が検出された帰国者が12月28日までに計14例となりました。英国での解析で特徴としては従来の流行株よりも感染性が高く、再生産数を0.4以上増加させ、伝播のしやすさを最大70%程度増加すると想定されていますが、現時点で重症化を示唆するデータは示されていません。これ以外にも南アフリカでは別系統の新規変異株(501Y‐V2)の報告もありますがわが国では確認されていません。年末年始の首都圏での感染拡大傾向との関連性や北海道での感染の再拡大が大いに心配されるところです。



posted by 凄腕院長 at 21:29| 日記

2020年09月10日

難治性の好酸球性副鼻腔炎の方に朗報 −生物学的製剤(デュピルマブ)が使える様に−


 コロナ渦により特に小児科や耳鼻科が大打撃を受けるさ中の今年3月から、ひっそりと耳鼻咽喉科疾患である「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に対する新たな治療として抗IL-4/13抗体であるデュピルマブ(商品名 デュピクセントレジスタードマーク)の皮下注射が認可されました。これは従来難治性のアトピー性皮膚炎と気管支喘息に対する治療薬で適応症が追加されたことになります。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎には2型炎症とよばれる炎症反応が関与しており、デュピルマブは2型サイトカインであるIL-4及びIL-13の両シグナル伝達を阻害することで2型炎症の上流から下流までを広範囲に抑制します。

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 現在では鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の多数は「好酸球性副鼻腔炎」であり中等・重症の好酸球性副鼻腔炎は厚労省の指定難病に認定されており約2万人居ると言われています。従来から鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対しては内視鏡下副鼻腔手術が行われており、鼻茸を基部から取り除き副鼻腔を鼻の中から徹底的に清掃する手術が多くの病院で行われて成果をあげています。しかしその中の一部で特に喘息を合併している方は鼻茸が再発しやすく何度も手術を受けることになったり、ステロイドを内服しないとまたすぐに再発を繰り返します。鼻茸による鼻つまりは集中力の低下を来し、また嗅覚・味覚障害により食べる楽しみが奪われ、ガスや煙の臭いに気づかず生命の危機にさらされることもあり得ることなどでQOLが低下することがあります。

 治療としては2週間おきに1本を皮下注射し、症状が安定したら4週毎の投与に変更することもあります。問題点は費用が3割負担の方で月約4万円(月に2本注射として)とやや高額なことですが、ステロイド内服に頼らざるをえない患者さんにとっては朗報と思います。当院でも気管支喘息に対し治療を行っている方で鼻の症状がかなり改善傾向である方が数名おられますが、今後注意深く観て行こうと思っています。

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posted by 凄腕院長 at 20:21| 日記