2020年06月21日

 新型コロナウイルス感染症についての話題 −抗体検査の意義は?−


 厚生労働省では、我が国の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体保有状況の把握のため、東京都、大阪府、宮城県の3都府県について、それぞれ一般住民約3,000名を性・年齢区分別に無作為抽出し、6月第一週に参加同意した計7950人(東京都1,971名、大阪府2,970名、宮城県3,009名)に血液検査を実施しました。その結果6月16日の発表によると、抗体陽性率は東京都で0.10%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%でした。これを見るといずれも各自治体の累積感染者の割合(5月31日時点で東京都0.038%、大阪府0.02%、宮城県0.004%)と比べ高い値となっています(つまり無症候で感染に気付かずにいるうちに自然治癒して抗体を獲得した人が相当いるわけです。)が、現時点でも大半の人が抗体を保有していないことが明らかになりました。

  厚労省抗体保有検査.JPG

 これとは別にソフトバンクグループが同グループ社員や医療従事者など約4万4000人を対象に実施した抗体定性検査では全体の0.43%医療従事者に限っては1.79%が陽性と判定されました。医療従事者の中で最も陽性率が高かった職種は受付・事務などが2.0%、次いで医師が1.9%、看護師などが1.7%と続き、歯科助手(0.9%)と歯科医師(0.7%)は比較的陽性率が低く予想外でした。
 これらの結果を見ると一臨床医としては意外と市中に感染が拡がっていないなと言うのが率直な感想ですが、それぞれの検査法の感度や特異度のばらつきの問題、標本抽出の問題などがあるものの、これをもって集団免疫がまだまだできていないので今後の第2、第3波による感染拡大に備えよという意見ももっともであると思います。また欧米では米ニューヨーク州で12.3%、英ロンドンで約17%、スウェーデンのストックホルムは7.3%と言う報告もあり、今までのところ日本における水際対策、クラスタ―潰し、自粛要請などの施策が奇蹟的に上手くいったのでしょうか?
 一方で英国バッキンガム大学のシコラ博士によるとラザフォードがんセンターに勤務する医療従事者161名に対する検査で新型コロナウイルス既感染者の抗体保有率はわずか7.5%と低く、これを当てはめると実際の感染者は10倍以上多いことになります。
 大坂大学の宮坂教授が言うように人間の体には自然免疫と獲得免疫があり抗体を保有しているということはその人が感染の既往があるという事実を表すにすぎません。新型コロナウイルスに対しては人種による感染率、重症化率の違いがありそうでその一つがBCG接種による自然免疫系の賦活化の可能性を挙げています(ヘルパーT細胞やキラーT細胞の活性化)。そもそも抗体が悪さをする(悪玉抗体)ことも報告され、また抗体ができてもどれだけ維持されるかもわかっていません。新型コロナウイルスの抗体価を測定するキットが市販され実際に検査を行っている一般診療所もある様ですが、その解釈は議論が分かれるところです。結論としては今後も気を緩めずにできる感染対策を続けていくしかないということでしょうか。



posted by 凄腕院長 at 17:51| 日記

2020年04月17日

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う受付方法変更についてのお知らせ(5/7に追記)


 今日(4/17)現在で国内での新型コロナウイルス感染者が増加し続けて遂に1万人に達し、昨日全国的に緊急事態宣言が発出されました。また本日は、東京や北海道では過去最多の感染者が報告される事態となってしまいました。しかし北大の西浦教授によると人との接触を8割減らすことができれば1か月程度で流行が終息可能とのことで、「密閉」「密集」「密接」の3密を避けることが重要なのはご存じの通りです。
 既に当院でも院内の消毒や換気、院内滞在時間を極力減らすような努力をしてきたつもりなのですが、もはやそれだけでは不十分と言わざるを得ず待合室での密集が生じがちです。そこで少しでも患者の皆様そして我々スタッフにとっても安心、安全に受診していただける様に今後時間をかけて少しずつ診療の体制を変更していきたいと考えています。現時点での方針は以下の通りです。

 患者の皆様同士の接触を極力減らすために

1)4/20(月)から「準予約制」とし、予約診療を主とするため当院ホームページ上のウェブ予約「日時指定予約」の枠を少しずつ増やしていきます。(まず午前は毎時1枠、午後2枠増とし様子を見ながら随時予約枠を増やします。)また来院時に受付での次回予約をしたり、お電話で予約することも可能です。
2)もちろん今までの通りウェブでの「当日順番予約」をすることも可能ですが、「日時指定予約」が優先ですのでお待ちいただく時間が長くなることがあります。またゴールデンウィーク明けを目途に、いずれ「当日順番予約」を停止する予定です。
3)直接来院して受付することも可能ですが同様に「日時指定予約」が優先ですので、やはり待ち時間が長くなる可能性があります。
4)初めて受診される方はウェブでの「日時指定予約」がとれませんので、まずお電話でお問い合わせ下さい。
5)木曜日は今まで来院時に予約した方のみの診療でしたが、予約できる枠を増やします。まずはお電話でお問い合わせ下さい。

 * 「日時指定予約」できる時間毎の人数(枠)は様子を見ながら設定を変更しますのでご了承下さい。
 * 予約をした方のキャンセルがなるべく無いようにお願い致します。万が一キャンセルする場合はなるべく早めに電話等でご連絡下さい。
 * 午前中よりも午後の方が空いている傾向ですので、どうぞご利用下さい。

 まずは感染が落ち着くまでの措置として、当初は混乱が生じることもあるかもしれませんが、ご理解とご協力をお願いします。またオンライン診療についても現在検討中で、追ってお知らせ致します。

*【5月7日に追記】その後も新型コロナウイルス感染症は拡大し続け緊急事態宣言も延長されました。とりわけ北海道内では第二波による感染者が多く、終息が見渡せない状況です。その様な中で当院での取り組みは今のところ特に混乱も無く順調に「予約制」に移行することができそうで、皆様には感謝致します。予約の枠については充分な人数を設定しているつもりですが、なるべくご迷惑をかけない様に経過を見ながら変更していく予定です。
 最後に本日ある患者さんの入院を某総合病院に依頼したところ、発熱やのどの痛みがあるという理由のみで断られてしまいました。この様な患者さんは多数居るものと思われ、いまだ札幌市でははっきりとした受け皿が無いのが現状です。一体私たちの様な一般診療所はどうすれば良いのでしょうか?発熱などカゼ症状のある患者さんは診療拒否される事例も多いと聞いています。しかし医療従事者としての各々の役割を果たしていくことが最前線でコロナと戦っている感染症指定病院の皆様の負担を減らし、その結果医療崩壊を少しでもくい止めることが出来ると信じて日々の診療に取り組みたいと思っています。



posted by 凄腕院長 at 23:09| 日記

2020年03月12日

 札幌で早目にハンノキ花粉が飛散し始めました!−初期療法が大事です− 


 道立衛生研究所によると(https://www.iph.pref.hokkaido.jp/pollen/pollen_info.html)
以前に当HPで予想していた通りに、札幌では2月下旬頃から例年より早めにハンノキ花粉が飛散しています。当クリニックでもここ1〜2週間のうちにシラカバ花粉症と診断のついている毎年症状の出る方で、既にハンノキ花粉によってアレルギー性鼻炎症状の出てしまった方が多数お見えになりました。中には今年初めて発症したのではと思われる方も少数ながらいらっしゃいます。3月に入って先週末から一気に気温が上がり雪解けも進んでおり、今後も天気の良い日には特にシラカバ花粉症で毎年症状の出る方は花粉の暴露に充分ご注意下さい。

   札幌ハンノキ花粉飛散状況.JPG
   2019ハンノキ2.JPG

 これも以前当HP上で述べた様に今シーズンのシラカバ花粉は例年より多く飛散することが予測されており、しかも例年より飛散開始が早まる可能性があります。4月の天候次第では4月前半や中旬頃の飛散もあるかもしれません。つらい鼻水、くしゃみ、鼻つまりによる不眠などの症状がなるべく酷くならない様にするには、まだまだ認知度が低い「初期療法」が重要です。症状が酷くなってしまってから慌てて薬物療法を始めるよりも事前に手を打っておきましょう。

 ここでおさらいですが「初期療法」とは「鼻アレルギー診療ガイドライン」によると、具体的には第2世代抗ヒスタミン薬(最もよく使用される薬剤でアレグラレジスタードマーク、アレロックレジスタードマーク、ザイザルレジスタードマークなど)や抗ロイコトリエン薬(オノンレジスタードマーク、キプレスレジスタードマークなど)もしくは鼻噴霧用ステロイド薬(アラミストレジスタードマーク、ナゾネックスレジスタードマークなど)を花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点から開始としています(つまりこれらの薬剤はある程度の即効性があるということです)。その他の薬剤(遊離抑制薬、抗PGD2・TXA2薬、Th2サイトカイン阻害薬、リザベンレジスタードマーク、バイナスレジスタードマーク、アイピーディレジスタードマークなどあまり使われません)は飛散開始予測日の1週間前をめどに投与開始となっています。つまり初期療法を始めるためには遅くとも4月の中旬から下旬までには受診していただく必要があり、症状が出始めたら直ぐにでも薬物療法を開始できる様に準備しておくことが肝要と言えます。毎年花粉症の症状に悩まされる方は充分お気をつけ下さい。



posted by 凄腕院長 at 17:02| 日記